SNOW CRYSTAL
-Parfect World Novelize-
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
水晶の華 第一話
 友情が恋を飛び越えて愛情に変わったのは、一体いつだったのだろう。化学反応にも似たその複雑な変化の速度は、未だに計測不能。
 ただ、心の奥底まで射抜くような、また死地に赴く時には怜悧な光を宿す緋色の瞳を、美しいと思いはしても、不思議と怖いと思ったことは一度もない。
 もしかしたら、最初から魅かれていたのかもしれない。
 その瞳に。


父さん、母さん
 お元気ですか。わたしもアラバスターも元気です。
 フォンさんがマスターになってから、わたしたちのギルドも少しずつ大きくなって、今では60人以上ものメンバーが籍を置いてるのよ。みんな大家族みたいに仲良くやってる。本当に居心地のいい場所を作れたと思うわ。
 もちろん、修行も怠ってないから安心してね。アラは、剣術の成長が他の人より遅いのを気にしてるみたい。だけど、その分着実に戦い方をマスターしていってるし、


 わたしはその時、ギルド内にある自分の執務室で、両親に向けた手紙を一心に綴っていた。ゴミ箱の中には書き損じが何枚も入っている。
 普段は筆不精気味のわたし、慣れないことはするものじゃないし、したくもないのだが、今回はやむを得ない。どうしても両親に伝えなければならないことがあったのだ。
 ふと手元に影が落ちた。見上げると、怪訝そうな顔が目の前にあった。
「何してんの」
「わ、わっ」
 見られまいと、慌てて手紙を裏返そうとして、脇に積んであった報告書や掲示板用のメモの山を崩してしまった。部屋中にひらひらと紙が舞う。
「ああああ……」
「ホントに何やってんの」
 床に落ちた書類を拾い集めてくれながら、呆れ声。
「幹部の俺にも見せられない極秘書類? サブマスター」
「……いや、その。そういうんじゃないけど」
「けど?」
 言葉に詰まるわたしを、机越しに緋色が射抜く。
「ううう」
 この眼に、わたし本当に弱いんだ。何もかも白状しなきゃいけない気がして。
 青くなったり赤くなったり忙しいわたしをじっと見つめていたローソンは。
「なんだよ、恥ずかしがるような内容じゃないじゃん。親への手紙だろ?」
 不敵な面で、ニヤリと笑った。
「よ、よよ読んだなああぁ!」
「はい、読みましたよ、っと」
 赤面して口をぱくぱくさせている間に、拾った書類を机上に乗せたその手で、ぱっと手紙を取り上げられてしまう。
「あっ、ちょっと。返してよ!」
 立ち上がって奪い返そうと試みたものの、反対にひょいと手首を捕らえられ……何をどうしたのだか、気付けば背後からがっちり抱え込まれてしまっていた。
 もがいたところで、わたしに戦士の腕を振りほどくほどの力はない。もとより手紙を取り返せるほどの俊敏さもないのだから、この結果は当然といえば当然なのだが……魔道師相手に白兵戦で本気出さないでもらいたい。
 わたしが諦めて暴れないのをいいことに、ローソンはじっくりと手紙を読んでいたらしい。
「これ、ちょっとだらだら書き過ぎなんじゃないの、ルティさん。もっと簡潔にさぁ」
「いやあぁぁあ! 添削とかしないでよおぉ!」
「こんなん報告書と一緒でしょうが。そういうの、得意なくせに」
「……だって」
 書こうとしているのは、わたしにとって、とてもとても大切なことなのだ。簡単には言葉にできない。できないから、ついだらだらと書いてしまうわけで……。
「そ、そういうローソンはどうしたのよ」
「俺? んなの、籍入れた翌日に出したぞ」
「いつの間に?!」
「君が疲れて眠りこけてる間にササッと書いたんだよ」
 ハニー、とわざわざ低めた声で耳元をくすぐる。狙いどおりにわたしが羞恥に小さく身体を震わせたのを確認すると、また耳元でクッと短く笑った。
 ずるい。今日の夫は、なんだか意地が悪い。
「内容も至ってシンプルだぜぇ。『結婚した、そのうち連れてく』、以上」
「はああぁぁあ?」
 いくらなんでも、それは簡潔すぎやしませんか。
「いいのいいの、結婚の報告なんてそんなもんなの」
「そ、そうかもしんないけどさぁ……」
 いやいや、わたしはそこまで簡潔にはすまい。やっぱり大切なことだもの。うん。
「とにかく、ルティさん、次からこういうのは家で書いて。俺、コソコソされんの嫌いだからね」
 そう言って、ローソンは、手紙を机上に戻した。まだ解放はしてくれない。でも、いつものように抱きしめてもくれない。やっぱり、怒っている、らしい。
 わたしを捕らえている右腕を両手できゅっと掴んで、顎を埋める。
「……家で書いてても、勝手に読まない?」
「堂々と書いてれば、取り上げてまで読まないよ」
「でも読むのね」
「読むね。たまに添削するかも」
 当然でしょ、と言わんばかりに、彼はあっさりと肯定した。
 ここまできっぱり言われては、ただ気恥ずかしいという理由で隠れて手紙を綴っていた自分が、いかにも間抜けに思えてくる。
「わかった。もうコソコソしません」
 観念して約束を口にした。ただし、全てを受け入れるわけじゃない。
「でも、一つだけ条件を付けさせて」
「なに?」
 一瞬、間をおいて、ゆっくりと見上げる。
「……添削だけは断固お断り」
 一瞬ぽかんとして、それから、くくく、と身体を揺らして本当におかしそうに笑い、ぎゅっと抱きしめてくれたので、わたしはようやく自分が赦されたことを知った。
 なるほど。隠し事はさせないし、力ずくでも暴くってことね。心に留めておかねば。
 仲間としての付き合いは長いけれど、伴侶となってからはほんの数日。まだ知らないことはたくさんある。先は長い。失敗を繰り返しても、ゆっくりと理解しあえたら、それでいい。
 コツコツとノックの音がした。
「仲直りしたなら、そろそろお邪魔してもいい?」
 振り返ると、開け放したままの扉に、足を組んだマスターが優雅にもたれかかっていた。
「フォンさん」
「まったく。二人でいるときは閉めておいてもらわないと、声かけ辛いったらないわよ」
 苦笑されてしまった。一体いつから見られていたのだろう。
 メンバーがいつでも気軽に立ち寄れるようにと、在室時にはいつも扉を開けているのだけど、ローソンが立ち寄ったのに気付かなかったことといい、今回はそれがすっかり仇になったというわけだ。
「よっ、フォンさん。今日も絶妙のタイミングで邪魔しに来たね。その後、彼氏はできた?」
 ローソンの軽口に、ぴきき、とフォンさんのこめかみに青筋が浮いた。
「余計なお世話ですっ! 自分が幸せだからって、人を出歯亀みたいに言わないでちょうだいっ」
 あわわ。最近メンバーが次々結婚してるのを、フォンさんが羨ましがってるコト知ってるくせに、ローソンってば。
 それでも笑顔をキープできるところは、さすがマスターである。……いや、ある意味、普通に怒るより怖いんだけれども。
「フォ、フォンさん。わたしに用事あるんでしょ。何かな?」
 ローソンがようやく解放してくれたので、わたしは手早くメモとペンを準備した。
「あ、いけない。そうでした」
 フォンさんは、こめかみを軽く撫でて(それで青筋を手品みたいに消してしまう彼女を、わたしは畏怖の念を込めて崇拝している)いずまいを正すと、普段どおりの軽やかな足取りでわたしの前に立った。


二話目を読む
水晶の華 INDEX
スポンサーサイト

テーマ:Perfect World -完美世界- - ジャンル:オンラインゲーム

コメント
この記事へのコメント
気になる続きw
第一話を読ませて早速、読ませてイタダキましたw

ギルドの仲間が出てくる小説というのもなかなかイイものですね~w

楽しみが増えますたw

次回も読ませてイタダキますw

(名前がネタなので、あえて「ガオ」とさせてもらいます~)
2007/10/25 (木) | URL | ガオ #-[ 編集]
どうせ出歯亀ですよ!

な~んて冗談はさておき・・・

ルティさんの才能に改めて感心しました。
これからも楽しく読ませていただきますので、
暇見つけて書いてくださいね!

さ~って 彼氏探しの旅に出ますか~w
2007/10/25 (木) | URL | ふぉんでゅ #mQop/nM.[ 編集]
楽しみです♪
ルティさん、すばらしいですv-352
なにがすごいって、身近なギルメンを登場人物にした小説という発想。
ものすごくわくわくします。
これからここで、ルティさん、ローソンさんの新婚生活が覗けそうですね♪
これからも楽しみにしていますv-238
2007/10/26 (金) | URL | よっしん #V9w9Oya2[ 編集]
おそばせながら・・・
読みに来ましたよ♪
知っているギルメンが登場する小説・・・
楽しい、嬉し、ワクワクものです♪
こんな才能をもってらしたなんて(^-^)
これからも楽しみにしてます!
2007/10/26 (金) | URL | うめっち #0glYdqRg[ 編集]
あま~ぃあま~ぃあま~ぃw
見に来ちゃいましたよ~w

私・・・フォンさんに惚れそうです(*ノωノ)

フォンさんの活躍に期待~♪
2007/10/26 (金) | URL | 那樹ナジュ #tw/GOPEY[ 編集]
わ~~wwきゃ~~ww
読んでるこっちが恥ずかしくなるよ!!

**テレテレ**(*' '*)**テレテレ**

続き・・・どうなっていくんだろうww

気になるけど、次もこの恥ずかしさに耐えられるのか!?

る、るてぃさぁ~んww


2007/10/26 (金) | URL | コンスタンツ #-[ 編集]
o(^^o)(o^^)oワクワク
ギルメンがどのような形で今後姿を現していくのか興味津々です。
またPWとは違ったルティさん独特の世界観での表現にも、才能を感じます。
今後の展開に期待しつつ、第2話がんばってくださいね^^
2007/10/28 (日) | URL | まぁくん #-[ 編集]
おへんじ
>>ALL
見に来てくれて、ありがとう!
仲間をモデルにした小説は、以前から書きたいと思っていて、実は日々研究を重ねていたのですw(誰が誰をどう呼ぶとか、口調とかね)
二話目もようやくUPできました。
みんなの期待してるような甘い展開ではありませんが、続きをお楽しみに!
2007/11/01 (木) | URL | ルティルト #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2006 SNOW CRYSTAL all rights reserved.
Powered by FC2 blog. Template by F.Koshiba.
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。